不思議の国のアリス

愛麗絲漫游奇境記

   8.

   第 8 篇

   女王さまのクロケー場

   王后的槌球場

   お庭の入り口には、おおきなバラの木が立っていました。そこにさいているバラは白でしたが、そこに庭師が三人いて、それをいっしょうけんめい赤くぬっていました。アリスは、これはずいぶん変わったことをしていると思って、もっとよく見ようと近くによってみました。ちょうど近くにきたら、一人がこう言ってるところでした。「おい五、気をつけろ! おれをこんなペンキだらけにしやがって!」

   靠近花園門口有一棵大玫瑰樹,花是白色的,三個園丁正忙著把白花染紅。 愛麗絲覺得很奇怪,走過去想看看。當她正朝他們走過去的時候,其中一個人說: “小心點,老五!別這樣把顏料濺到我身上。”

   「しょうがないだろ」と五は、きつい口ぶりで言いました。「七がひじを押したんだよ」

   “不是我不小心,”老五生气地說,“是老七碰了我的胳膊。”

   すると七が顔をあげていいました。「そうそうその調子、いつも人のせいにしてりゃいいよ」

   這時老七抬起頭說:“得啦!老五,你老是把責任推給別人。”

   「おまえはしゃべるんじゃない!」と五。「女王さまがついきのうも、おまえの首をちょん切るべきだって言ってたぞ!」

   “你最好別多說了,”老五說,“我昨天剛听王后說,你該受斬頭的懲罰!”

   「どうして?」と最初にしゃべったのが言います。

   “為什么?”第一個說話的人問。

   「二! おまえにはかんけいない!」と七。

   “這与你無關,老二!”老七說。

   「かんけい、大ありだよ!」と五。「だから話しちゃうもんね――コックに、タマネギとまちがってチューリップの球根をもってったからだよ」

   “不,与他有關!”老五說,“我要告訴他──這是由于你沒給廚師拿去洋 蔥,而拿去了郁金香根!”

   七はペンキのはけをふりおろして、ちょうど「まあだまってきいてりゃいい気になりやがって――」と言いかけたところで、たまたまアリスが目に入りいましたので、いきなり身をとりつくろっています。ほかの二人も見まわして、みんなふかぶかとおじぎをしました。

   老七扔掉了手上的刷子說,“哦,說起不公平的事……”他突然看到了愛麗 絲,愛麗絲正站著注視他們呢。他隨即不說了,那兩個也回過頭來看。然后三人 都深深地鞠了一躬。

   「ちょっとうかがいますけど」とアリスは、こわごわきいてみました。「なぜそのバラにペンキをぬってるんですか?」

   “請你們告訴我,”愛麗絲膽怯地說,“為什么染玫瑰花呢?”

   五と七はなにもいわずに、二のほうを見ます。二は、小さな声でこうきりだしました。「ええ、なぜかといいますとですね、おじょうさん、ここにあるのは、ほんとは赤いバラの木のはずだったんですがね、あっしらがまちがえて白いのをうえちまったんですわ。それを女王さまがめっけたら、みーんなくびをちょん切られちまいますからね。だもんでおじょうさん、あっしらせいいっぱい、女王さまがおいでになるまえに――」このとき、お庭のむこうを心配そうに見ていた五が声をあげました。「女王さまだ! 女王さまだ!」そして庭師三名は、すぐに顔を下にはいつくばってしまいました。足音がたくさんきこえて、アリスは女王さまが見たかったのでふりむきました。

   老五和老七都望著老二,老二低聲說:“哦,小姐,你知道,這里應該种紅 玫瑰的,我們弄錯了,种了白玫瑰,如果王后發現,我們全都得被殺頭。小姐, 你看,我們正在盡最大努力,要在王后駕臨前,把……”就在這時,一直在焦慮 地張望的老五,突然喊道:“王后!王后!”這三個園丁立即臉朝下地趴下了。 這時傳來了許多腳步聲,愛麗絲好奇地審視著,想看看王后。

   まずはこん棒を持った兵隊さんが十名。みんな庭師三名とおんなじかたちをしています。長方形で平べったくて、かどから手と足がはえてます。つぎに廷臣(ていしん)たち十名。これはみんな、ダイヤモンドで全身をきかざって、兵隊さんたちと同じく、二名ずつでやってきました。そのあとからは王さまの子どもたち。このかわいい子たちは、手に手をとってたのしそうにぴょんぴょんはねながら、二名ずつでやってきます。ぜんぶで十名いて、みんなハートのかざりだらけです。つづいてはお客たちで、ほとんどが王さまや女王さまたちですが、アリスはそのなかにあの白うさぎがいるのを見つけました。はや口で心配そうにしゃべっていて、だれがなにを言ってもにこにこして、アリスに気がつかずにとおりすぎました。それからハートのジャックがきます。王さまのかんむりを、真紅(しんく)ビロードのクッションにのせてはこんでいます。そしてこのおもおもしい行列の一番最後に、ハートの王さまと女王さまがやってまいりました。

   首先,來了十個手拿狼牙棒的士兵,他們的樣子全都和三個園丁一樣,都是 長方形的平板,手和腳長在板的四角上。接著來了十名侍臣,這些人全都用鑽石 裝飾著,像那些士兵一樣,兩個兩個并排著走。侍臣的后面是王室的孩子們,這 些可愛的小家伙,一對對手拉著手愉快地跳著跑來了,他們全都用紅心(紅心和 侍臣的鑽石,士兵的狼牙棒,是紙牌中的三种花色。即:紅桃、方塊、草花,英 文原意為紅心、鑽石、棒子。)裝飾著。后面是賓客,大多數賓客也是國王和王 后。在那些賓客中,愛麗絲認出了那只白兔,它正慌忙而神經質地說著話,對別 人說的話都點頭微笑,卻沒注意到愛麗絲。接著,是個紅心武士,雙手托著放在 紫紅色墊子上的王冠。這龐大的隊伍之后,才是紅心國王和王后。

   アリスは、自分も庭師三名と同じようにはいつくばったほうがいいのかな、とまよいましたが、王さまの行列でそんなきそくがあるなんて、きいたことはありませんでした。「それに、もしみんなが顔を下にはいつくばって、だれも行列を見られなければ、行列なんかしたってしょうがないじゃない?」そう思ってアリスは、そのまま立って、まっていました。

   愛麗絲不知道該不該像那三個園丁那樣,臉朝地的趴下,她根本不記得王室 行列經過時,還有這么一個規矩。“人們都臉朝下趴著,誰來看呢?這樣,這個 行列有什么用呢?”也這樣想著,仍站在那里,等著瞧。

   行列がアリスの向かいにやってくると、みんな止まってアリスをながめました。そして女王さまがきびしい声でききます。「これはだれじゃ!」きかれたハートのジャックは、へんじのかわりににっこりおじぎをしただけでした。

   隊伍走到愛麗絲面前時,全都停下來注視著她。王后嚴厲地問紅心武上: “這是誰呀!”紅心武士只是用鞠躬和微笑作為回答。

   「ばかものめが!」と女王さまは、きぜわしく何度もふんぞりかえります。そしてアリスにむかってつづけました。「そこな子ども、名前は?」

   “傻瓜!”王后不耐煩地搖搖頭說,然后向愛麗絲問道:“你叫什么名字? 小孩?”

   「アリスともうします、女王陛下」とアリスはとってもれいぎ正しくもうしました。でもそのあとでこう思いました。「でも、これみんなただのトランプなんだわ。なんにもこわがることないわね!」

   “我叫愛麗絲,陛下。”愛麗絲很有禮貌地說,可她又自己嘀咕了句:“哼! 說來說去,他們只不過是一副紙牌,用不著怕他們!”

   「してこやつらはだれじゃ?」と女王さまは、バラの木のまわりにはらばいになっている庭師たちを指さしました。というのも、顔を下にしてはいつくばっていたし、せなかのもようはみんないっしょなので、女王さまはそれが庭師か、兵隊さんか、廷臣(ていしん)たちか、それとも自分の子どものうち三名なのか、わからなかったのです。

   “他們是誰呢?”皇后指著三個園丁問。那三個園丁圍著一株玫瑰趴著,背 上的圖案同這副紙牌的其他成員一樣,看不出這三個是園丁呢?還是士兵、侍臣, 或者是她自己的三個孩子了。

   「あたしにわかるわけないでしょう」アリスはこう言って、自分の勇気にわれながらびっくりしました。「あたしにはかんけいないことですから」

   “我怎么知道呢?這不干我的事!”愛麗絲回答,連她自己都對自己的勇气 感到惊奇。

   女王さまは怒ってまっ赤になり、そして野獣みたいにしばらくアリスをにらみつけてから、ぜっきょうしました。「こやつの首をちょん切れ! こやつの――」

   王后的臉气紅了,兩眼像野獸樣瞪了愛麗絲一會儿,然后尖聲叫道:“砍掉 她的頭!砍掉……”

   「ばかおっしゃい!」とアリスは、とても大声できっぱりと言いまして、すると女王さまはだまってしまいました。

   “廢話!”愛麗絲干脆大聲說。而王后卻不說話了。

   王さまが手を女王さまのうでにかけて、びくびくしながら言います。「まあま あ、まだ子どもじゃないか!」

   國王用手拉了下王后的胳膊,小聲地說:“冷靜點,我親愛的,她還只是個 孩子啊!”

   女王さまは怒って王さまからはなれ、ジャックにいいました。「こやつらをひっくりかえせ!」

   王后生气地從國王身邊轉身走開了,并對武士說:“把他們翻過來。”

   ジャックはとてもしんちょうに、片足でそうしました。

   武士用腳小心地把他們三個翻了過來。

   「立て!」と女王さまが、かんだかい大声で言うと、庭師三名はすぐにとびおきて、王様と、女王さまと、お子たちと、そのほかみんなにぺこぺこおじぎをはじめました。

   “起來!”王后尖聲叫道。那三個園丁赶緊爬起來,開始向國王、王后、王 室的孩子們以及每個人一一鞠躬。

   「やめんか! めまいがする!」と女王さまがどなります。そしてバラの木のほうを見てつづけました。「ここでいったいなにをしておった?」

   “停下來!”王后尖叫著,“把我的頭都弄暈了!”她轉身向著那株玫瑰繼 續問:“你們在于什么?”

   「おそれながらもうしあげますと、女王陛下どの」と二がとてもつつましく、片ひざをついて言いました。「てまえどもがしており――」

   “陛下,愿你開恩,”老二低聲下气地跪下一條腿說,“我們正想……”

   「なるほど!」女王さまは、その間にバラの木を調べておりました。「こやつらの首をちょん切れ!」そして行列がまたうごきだしましたが、兵隊さんが三名のこって、かわいそうな庭師たちの首をはねようとしますので、庭師たちはアリスに助けをもとめてかけよってきました。

   “我明白了!砍掉他們的頭!,王后察看了一陣玫瑰花后說。隊伍又繼續前 進了,留下三個士兵來處死這三個不幸的園丁。三個園丁急忙跑向愛韶絲,想得 到她的保護。

   「首なんか切らせないわ!」とアリスは、近くにあったおっきな花びんに庭師たちを入れてあげました。兵隊さん三名は、一分かそこらうろうろしてさがしていましたが、だまってほかのみんなのあとから行進してきます。

   “你們不會被砍頭的!”愛麗絲說著就把他們藏進旁邊的一個大花盆里。那 三個士兵到處找,几分鐘后還沒找到,只得悄悄地去追赶自己的隊伍了。

   「あやつらの首はちょん切ったか!」と女王さまはさけびます。

   “把他們的頭砍掉沒有?”王后怒吼道。

   「あのものどもの首は消えてしまいました、女王陛下どの!」と兵隊たちがさけんでこたえました。

   “他們的頭已經掉了,陛下!”士兵大聲回答,

   「よろしい! おまえ、クロケーはできる?」

   “好极了!”王后說,“你會玩槌球嗎?”

   兵隊たちはだまってアリスのほうを見ました。この質問が明らかにアリスむけだとでもいうように。

   士兵們都看著愛麗絲,這個問題顯然是問愛麗絲的。

   「ええ!」とアリス。

   “會!”愛麗絲大聲回答。

   「ではおいで!」と女王さまがほえ、アリスは行列にまじって、これからどうなるのかな、と心から思いました。

   “那就過來!”王后喊道。于是愛麗絲就加入了這個隊伍,她心里盤算著以 后會發生什么事情呢?

   「いやなんとも――よいお天気ですな」とびくびく声がよこできこえました。となりを歩いていたのは白うさぎで、こちらの顔を心配そうにのぞきこんでいます。

   “這……這真是一個好天气呵!”愛麗絲身旁一個膽怯的聲音說。原來愛麗 絲恰巧走在白兔的旁邊,白兔正焦急地偷愉看著她的臉呢。

   「ええとっても」とアリス。「――公爵夫人はどちら?」

   “是個好天气,”愛麗絲說,“公爵夫人在哪里呢?”

   「これうかつなことを!」とうさぎは、小さな声ではや口にもうします。こう言いながらも、かたごしに心配そうにのぞいて、それからつま先だちになって、アリスの耳近くに口をもってきてささやきました。「公爵夫人は死刑宣告をうけたのですよ」

   “噓!噓!”兔子急忙低聲制止她,同時還擔心地轉過頭向王后看看,然后 踮起腳尖把嘴湊到愛麗絲的耳朵根上,悄悄地說:“她被判處了死刑。”

   「どうして?」

   “為什么呢?”愛麗絲問。

   「いま、『まあかわいそうに』とおっしゃいましたか?」とうさぎ。

   “你是說真可怜嗎?”兔子問。

   「いいえ、言ってませんけど。ぜんぜんかわいそうだと思わないし。『どうして?』っていったんです」

   “不,不是,”愛麗絲問,“我沒想可怜不可怜的問題,我是說為什么?”

   「女王さまの横っつらをなぐったんです――」とうさぎが言って、アリスはゲラゲラわらってしまいました。うさぎがちぢみあがってささやきます。「ああおしずかに! 女王さまのお耳にとどきます! じつはですな、公爵夫人はいささかおくれていらっしゃいまして、女王さまがそこで――」

   “她打了王后耳光……”兔子說。愛麗絲笑出聲來了。“噓!”兔子害怕地 低聲說,“王后會听到的!你知道,公爵夫人來晚了,王后說……”

   「位置について!」と女王さまが、かみなりのような声でどなりまして、みんなあちこちかけまわりだして、おたがいにごっつんこしてばかりいます。でも、一分かそこらでみんなおちついて、試合開始です。アリスは、こんなふうがわりなクロケー場は見たこともないと思いました。そこらじゅう、うねやみぞだらけ。玉は生きたアナグマで、マレットは生きたフラミンゴ、そして兵隊さんたちがからだをおって四つんばいになって、ゲートをつくっているのです。

   “各就各位!”王后雷鳴般地喊了一聲,人們就朝各個方向跑開了,撞來撞 去的,一兩分鐘后總算都站好了自己的位置。于是游戲開始了。 愛麗絲想,可還從來沒見過這樣奇怪的槌球游戲呢?球場到處都是坎坷不平 的,槌球是活刺 ,槌球棒是活紅鶴(紅鶴:Phoenicopterus科,趾間有蹼,因 种不同羽色各异,有紅、灰等色。雖稱紅鶴,但与鶴科Gruidae無關。中國無此鳥。), 士兵們手腳著地當球門。

   アリスがまず一番くろうしたのは、フラミンゴをじっとさせておくことです。フラミンゴのからだは、なんとかうまいぐあいにうでの下におさめて、足をたらすようにしたのですけれど、でもだいたい、ちょうど首をきちんとのばさせて、その頭でアナグマをたたこうとしたとたんに、フラミンゴはぐいっと首をねじって、アリスの顔を見あげます。そしてその顔が、いかにもわけわかりませんという顔つきなので、ついふきだしてしまいます。さらに頭を下げさせて、もう一回やってみようとすると、アナグマがまるまるのをやめて、もぞもぞあっちへいってしまおうとしているので、すごく頭にきます。おまけに、アナグマをむかわせたい方向には、たいがいうねやみぞがあったし、それに四つんばいの兵隊さんたちも、しょっちゅうおきあがってはクロケー場のよそにうろうろしています。アリスはじきに、こいつはじつにむずかしいゲームだぞ、という結論にたっしました。

   起初,愛麗絲很難擺弄紅鶴,后來總算很成功地把紅鶴的身子舒服地夾在胳 膊底下,紅鶴的腿垂在下面。可是,當她好不容易把紅鶴的脖子弄直,准備用它 的頭去打那個刺 時,紅鶴卻把脖子扭上來,用奇怪的表情看著愛麗絲的臉,惹 得愛麗絲大聲笑了。她只得把紅鶴的頭按下去,當她准備再一次打球的時候,惱 火地發現刺 已經展開了身子爬走了。此外,把刺 球打過去的路上總有一些土 坎或小溝,躬腰做球門的士兵常常站起來走到球場的其它地方去。愛麗絲不久就 得出結論:這确實是一個非常困難的游戲。

   参加者たちはみんな、順番をまったりしないで、いっぺんに玉をうっていて、そのあいだずっといいあらそっては、アナグマをとりあってけんかしてます。そしてじきに女王さまはカンカンに怒って、そこらじゅうズシズシうろついては、「あやつの首をちょん切れ!」だの「こやつの首をちょん切れ!」だの一分に一度くらいはわめいています。

   參加游戲的人沒等輪到自己,就一起打起球來了,不時地為了刺 爭吵和打 架。不一會,王后就大發雷霆,跺著腳來回地走,大約一分鐘叫喊一次:“砍掉 他的頭!”“砍掉她的頭!”

   アリスはとってもいやーな気持ちになってきました。そりゃたしかに、自分はまだ女王さまとはもめていませんけれど、でもそれがすぐにでもおきかねないのはわかります。「そうなったらあたし、どうなっちゃうの? ここではみんな、首切りが大好きなんだもの。まだ生きてる人がいるほうが不思議ってもんだわ!」

   愛麗絲感到非常不安,說真的她還沒有同王后發生爭吵,可是這是每分鐘都 可能發生的呀!“如果吵架的話,”她想,“我會怎么樣呢?這儿的人太喜歡砍 頭了!可是很奇怪,現在還有人活著。”

   アリスは、なんとかにげだすほうほうはないか、さがしていました。見られずににげられないものかと思っているところへ、宙に変なものがあらわれているのに気がつきました。最初はとっても首をひねりましたが、一分かそこらながめていると、それがニヤニヤわらいだとわかりました。「あら、チェシャねこだわ。これでお話相手ができた」

   愛麗絲就尋找逃走的路,而且還想不被人發現的逃開。這時,她注意到天空 出現了一個怪東西, 起初她惊奇极了,看了一兩分鐘后,她判斷出這是一個笑容,并對自己說: “這是柴郡貓,現在我可有人說話了。”

   「ちょうしはどうだい」ねこは、しゃべれるだけのものがあらわれたとたんに言いました。

   “你好嗎?”柴郡貓剛出現了能說話的嘴就問。

   アリスは、目があらわれるまでまってから、うなずきました。「両耳が出てからじゃないと、話してもむだね。片耳でもいいけど」一分かそこらで、頭がぜんぶあらわれたので、アリスはフラミンゴをおいて、試合のようすを話しだしました。ねこは、もうじゅうぶんにあらわれたと思ったらしくて、頭から先はもう出てきませんでした。

   愛麗絲等到它的眼睛也出現了,才點點頭。“現在跟它說話沒用處,”她想, “應該等它的兩只耳朵也來了,至少來,了一只,再說話。”過了一兩分鐘,整 個頭出現了,愛麗絲才放下紅鶴,給它講打槌球的情況。她對于有人听她說話非 常高興。那只貓似乎認為出現的部分已經夠了,就沒有顯露出身子。

   「ぜんぜん公平にやってないと思うわ」とアリスは、ちょっとぐちっぽくきりだしました。「それにみんな、ものすごくけんかばかりで、自分の声もきこえやしない――それにルールがぜんぜんないみたいなの。あったとしても、だれもそんなのまもってないわ――それに、なんでもかんでも生きてるから、もうすっごくややこしいのよ。たとえばあそこ、あたしがこんどくぐるはずのアーチは、クロケー場のむこっかわのはしをウロウロしてるし――それにいまは女王さまのアナグマにあてるはずが、あたしのアナグマを見たら、にげだしちゃったんだから!」

   “他們玩得不公平,”愛麗絲抱怨地說,“他們吵得太厲害了,弄得人家連 自己說的話都听不清了。而且他們好像沒有一定的規則,就算有的話,也沒人遵 守。還有,你簡直想象不到,所有的東西都是活的。真討厭。譬如說,我馬上就 要把球打進球門,而那個球門卻散步去了;再加我正要用自己的球碰王后的刺猾 球,哼,它一見我的球來撒腿就跑掉啦!”

   「女王さまは気にいった?」とねこは小声でききました。

   “你喜歡王后嗎?”貓輕聲說。

   「ぜーんぜん」とアリス。「だってすごく――」ちょうどそこで、女王さまがすぐうしろにいて、きき耳をたてているのに気がつきました。そこでつづけます。「――おじょうずで、勝つにきまってるんですもの、試合を最後までやるまでもないくらい」

   “一點都不喜歡,”愛麗絲說,“她非常……”正說到這里,她突然發覺王 后就在她身后听呢?于是她馬上改口說:“非常會玩椒球,別人簡直不必要再同 她比下去了。”

   女王さまはにっこりして、よそへいってしまいました。

   王后微笑著走開了。

   「だれと話をしとるのかえ?」と王さまがアリスのところにやってきて、ねこの頭をとても不思議そうにながめました。

   “你在跟誰說話?”國王走來問愛麗絲,還很奇怪地看著那個貓頭。

   「あたしのお友だちでございます――チェシャねこなんですよ。しょうかいさせていただけますか」

   “請允許我介紹,這是我的朋友──柴郡貓。”愛麗絲說。

   「どうもようすがまるで気にいらん」と王さま。「しかし、のぞみとあらば、わが手にせっぷんを許してつかわす」

   “我一點也不喜歡它的模樣,不過,如果它愿意的話,可以吻我的手。”國 王說。

   「やめとく」とねこ。

   “我不愿意。”貓回答。

   「失敬なことを! それと、わしをそんな目で見るな!」と王さまは、アリスのうしろにかくれてしまいました。

   “不要失禮!”國王說,“別這樣看我了!”他一邊說一邊躲到愛麗絲的身 后。

   「ねこだって王さまを見るくらいはできる。どっかでそう読んだんですけれど、どこでかはわすれました」とアリス。

   “貓是可以看國王的,我在一本書上見過這句話,不過不記得是哪本書了。” 愛麗絲說。

   「ふん、こやつはここにいてはまかりならん」と王さまはとてもきっぱりもうしまして、ちょうどとおりすがりの女王さまによびかけました。「妻や! おまえ、このねこをどうにかしてもらえんかね?」

   “喂,必須把這只貓弄走!”國王堅決地說,接著就向剛來的王后喊道: “我親愛的,我希望你來把這只貓弄走。”

   女王さまは、問題があればその大小をとわず、解決法は一つでした。「首をちょん切れ!」とまわりを見もしないで申します。

   王后解決各种困難的辦法只有一种:“砍掉它的頭!”她看也不看一下就這 樣說。

   「わしみずから首切り役人をつれてまいるとしよう」と王さまはうれしそうに言って、いそいで出かけました。

   “我親自去找劊子手。”國王殷勤地說著,急急忙忙走了。

   アリスは、いまのうちにもどって試合のようすを見てみよう、と思いました。女王さまが、カッカしてわめきちらしているのが遠くできこえたからです。順番をのがしたせいで、参加者が三名、もう死刑にされたのがきこえたし、試合はもうめちゃくちゃで、自分の順番かどうかぜんぜんわからなかったので、これじゃなんだかまずいぞ、と思いました。そこで自分のアナグマをさがしにでかけました。

   愛麗絲听到王后在遠處尖聲吼叫,想起該去看看游戲進行得怎樣了。愛麗絲 已經听到王后又宣判了三個人死刑,原因是輪到他們打球而沒有馬上打。愛麗絲 很不喜歡這個場面,整個游戲都是亂糟糟的,弄得她根本不知道什么時候輪到, 什么時候不輪到。因此她就走了,找她的刺 去了。

   アナグマはべつのアナグマとけんかのまっさいちゅうで、だからアナグマどうしをぶつけるにはぜっこうのチャンス、とアリスは思いました。ただ一つ困ったことに、フラミンゴがお庭のむこう側にいってしまっていて、そこでアリスが見たところ、木にとびあがろうとして、むだにがんばっています。

   她的刺 正同另一只刺 打架,愛麗絲認為這真是用一只刺 球去打中另一 個刺 球的好机會,可是她的紅鶴卻跑掉了,愛麗絲看到它正在花園的那邊,在 徒勞地向樹上飛。

   フラミンゴをつかまえてもどってきたころには、アナグマのけんかも終わっていて、二匹ともいなくなっていました。「でもどうでもいっか。クロケー場のこっち側は、ゲートがぜんぶいなくなっちゃってるし」そう思ってアリスは、フラミンゴがまたにげださないように、うでの下にしっかりとかかえて、お友だちともっとおしゃべりしようと、もどっていったのです。

   等她捉住紅鶴回來,正在打架的兩只刺 都跑得無影無蹤了。愛麗絲想: “這沒多大關系,因為這里的球門都跑掉了。”為了不讓紅鶴再逃跑,愛麗絲把 它夾在胳膊下,又跑回去想同她的朋友多談一會儿。

   チェシャねこのところにもどってみると、まわりにかなりおっきな人ごみができていたのでおどろきました。首切り役人と王さまと女王さまが、論争(ろんそう)をしています。三名は同時にしゃべっていますが、それ以外はみんなだんまりで、すごくもじもじしています。

   愛麗絲走回柴郡貓那儿時,惊奇地看到一大群人圍著它,劊子手、國王、王 后正在激烈地辯論。他們同時說話,而旁邊的人都靜悄悄地呆著,看上去十分不 安。

   アリスがすがたを見せたとたん、その三名がいっせいに自分の意見をうったえてきて、問題を解決してくれ、といいます。そして三名とも自分の言いぶんをくりかえすのですが、みんな同時にしゃべるので、いったいそれぞれなにを言ってるのか、きちんと理解するのは、とてもたいへんでした。

   愛麗絲剛到,這三個人就立即讓她作裁判,他們爭先恐后地同時向她重复自 己的理由,愛麗絲很難听清楚他們說的是什么。

   首切り役人の言いぶんは、首を切りおとすには、まずその首がどこかのからだにくっついていなくちゃダメだ、というものです。首だけの首を切りおとすなんて、いままでやったこともないし、だからいまさらこの歳(とし)になってはじめるつもりもないよ、と言います。

   劊子手的理由是:除非有身子,才能從身上砍頭,光是一個頭是沒法砍掉的。 他說他從來沒做過這种事,這輩子也不打算做這樣的事了。

   王さまの言いぶんは、首がそこにあるんだから、それを切りおとすだけのことでなんの問題もない、へりくつをもうすな、というものでした。

   國王的理由是:只要有頭,就能砍,你劊子手執行就行了,少說廢話。

   女王さまの言いぶんは、いますぐなんとかしないと、みんな一人のこらず死刑にしてやる、というものでした(この最後のことで、みんなあんなに困って不安そうだったのです)。

   王后的理由是:誰不立即執行她的命令,她就要把每個人的頭都砍掉,周圍 的人的頭也都砍掉(正是她最后這句話,使這些人都嚇得要命)。

   アリスとしてはなんと言っていいかわかりませんでした。「あれは公爵夫人のものだわ。だから公爵夫人におききになったほうがいいわよ」

   愛麗絲想不出什么辦法,只是說:“這貓是公爵夫人的,你們最好去問她。”

   「あやつはろうやにおるぞ。つれてまいれ」と女王さまが首切り役人にもうしますと、役人は矢のようにびゅーんととんでいきました。

   “她在監獄里,”王后對劊子手說,“把她帶來!”劊子手好像离弦的箭似 的跑去了。

   役人がいってしまったとたんに、ねこの頭は消えだしまして、公爵夫人をつれて役人がもどってきたころには、もう完全に消えてしまいました。だから王さまと役人はあちこちかけずりまわって、必死でねこをさがし、ほかのみんなは試合にもどっていきました。

   就在劊子手走去的一剎那,貓頭開始消失,劊子手帶著公爵夫人來到時,貓 頭完全沒有了。國王和劊子手就發瘋似地跑來跑去到處找,而其他人又回去玩槌 球了。

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